スニークオープンはドキドキの終焉であり本番へのステップだ【スプラッシュ・マウンテン008】

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ぎこちない僕らのアトラクション運営も、その後のキャスト・プレビューとスニークオープンを経てだんだん磨かれていった。

とりあえずプレビューは一日3時間限定の運営であり、全部で4日間用意されていた。9月7〜10日。そして9月11日からは一般公開する。
といっても、正式なオープン日は10月1日だ。公式に定められた公開日であり、パーク内、クリッターカントリーの入口を塞ぐ茶色い壁にも「10月1日オープン予定」と書かれている。
それまでの約3週間は、スニークオープン(ソフトオープンとも言う)と呼ばれた。

この期間に来園した人にとっては、正式に始まる前にサービスで乗れてしまうのでラッキーだ。来園したゲストは、まだ始まっていないはずの新アトラクションが稼働していることを知って喜んだことだろう。

運営する側にとっては試験的に運営できるので、僕らが徐々にレベルアップしていくのに格好の期間であり、相当に助かっていた。もしこの期間がなかったら、当日にぶっつけ本番で初めての運営を行うことになり、相当泡を食っていたはずだ。

前回書いたように、スプラッシュ・マウンテンというシステムを動かす僕らのスキルが未熟だったせいで、良質なショーを提供できているとは到底言えない状態だった。
リード達もそれを苦々しく思い、また内心焦っていたことだろう。

正式オープンの10月1日を迎えるまでの約3週間が、僕らに貴重な猶予を与えてくれたのだ。

ただし、いいことばかりではない。
当時TDLに届いた苦情に、こんなものがあった。

「うちの子供が、先月(9月)に来園してスプラッシュ・マウンテンに乗れたことを学校で話したら、(まだやっていないのに、と)嘘つき呼ばわりされてクラスメートからいじめられた」

その子には申し訳ないが、苦笑せざるを得なかった。

当時、テレビCMが一週間くらい前から集中的に放送されていて、「10月1日オープン・スリルに飛び込め!(スプラッシュマウンテンのキャッチフレーズ)」と流れまくっていたので無理もない。

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キャストプレビューに参加して、ゲストとして乗ってみる

キャスト・プレビュー(オープン前にキャスト限定で乗れる)の日は全部で4日間あった。うち2日は勤務に入り、3日めは僕もプレビューを利用した。
4日めはお休みだった。

スプラッシュ・マウンテンのキャスト・プレビューは、アトラクション単体ではなくクリッターカントリーという新しいエリアのオープンを意味していたので、スプラッシュのみでなく、レストラン「グランマ・サラのキッチン」のプレビューも兼ねていた。軽食を提供する売店「ラケッティのラクーンサルーン」は確かクローズしていたと思う。

僕が現役の期間にいくつもの新アトラクションが誕生し、その度にキャスト・プレビューが行われてきて参加したが、だいたい1日〜2日間だ。その間に利用しなかったら、一般ゲストと同じくパスポートを買って入園しないと乗れない。

通常、事前に全キャストを対象にプレビューチケットが配布される。封筒の中には社長からのメッセージと、チケットが同封されている。
それを持って指定の日に裏口から入場し、こっそり乗ってこっそり出ていく(笑)。これが通常のキャストプレビューだ。

しかしスプラッシュ(クリッターカントリー)のプレビューは、全キャストにチケットが配布されなかった。僕も当然もらえなかった。

リードがチケットを余らせており、行きたい人がいたらあげるよ、と言われ、もらったのだ。そのリード(誰だったか忘れた)は全日勤務に入っており使えず、代わりに、プレビューで勤務を頑張った人へあげるよ、と言われ特別にもらえたのだ。
「二日以上勤務に入っている人いる?」と聞かれ、その場にいた数名が名乗りを上げて、チケットをいただいた。

その時チケットをもらった数名のスプラッシュのキャストで連れ立って、一緒にプレビューへ行った。
もちろんスプラッシュへ乗りに行けば、自分の仲間が頑張っているところへ乗りに行くというのは、なかなか奇妙な感じだ。

当日のパークは19時閉園。
4日間も用意され、しかも閉園後に行われるなど、振り返ってみると、やはり破格な待遇を感じさせる。約280億円もかけた新施設だけに、力の入れようは半端ない。

で、当日僕らは一回乗りに行き、その後グランマ・サラのキッチンへ入り食事にありついた。食事は有料だったが特別価格で販売していた。
通常は480円くらいのアップルパイが120円くらいだったような。安っす!と驚いたのだけ覚えている。

スニークオープンのおかげで僕らは鍛えられていった

9月11日。
スニークオープン初日は、僕は早番勤務だった。

前日の夜まで、クリッターカントリーの入口には高い板壁が立ちはだかっていたが、たった一晩で撤去され、その朝はクリッターカントリーの坂道を歩いていけるようになっていた。

朝、オンステージを通って出勤していくと、きれいに撤去された壁の代わりに、新しいテーマランドが一つ、誕生していた。ようやく完成した美しい世界が、パークに仲間入りしたのだ。

僕は軽快にクリッターカントリーの上り坂を上がっていく。
長い期間設置されていた板壁の痕跡が、地面に汚れとしてうっすら残されていた。早朝からナイトカストーディアルが頑張って洗浄しても、取り切れなかったのだろう。

ボート台数は50台で行く、とリードが告げた。

パークオープンした直後こそ、ゲストはちょろちょろとしかやってこないので拍子抜けしたのを覚えている。なんだ、全然来ないじゃないか、と。
そりゃそうだ、まさかもうオープンしているなんて、みなさん知らないわけで。

この日、待ち時間が最高どのくらいだったかは記録も記憶もない。その上、午前11時過ぎにアトラクションが運営停止して、現場は混乱していたからだ。
そのまま食事休憩に行き、戻ってきて復旧、再開。

16時までのシフトだったが、勤務終了直前に、僕はボートに乗ることができた。早番で乗れるなんて珍しいなぁ。普段はめったに乗れませんよ。

ゲストの乗っている後ろ、4列目に着席。内部のショーが正常に動いているかの確認のための乗船だ。

前半、屋外の高いところを流れていくと視界が開け、眼下にアメリカ河が広がっている。マークトウェイン号は強風で停船し船着き場に、カヌーはドックに、そして手前のキューエリアに大勢のゲストが並んでいる。
そうか、こういう風景になるんだな、と気付いた

そう、スプラッシュが通常運営している時にボートに乗った、初めての機会だったのだ。
これから何百回も乗ることになる、ごく普通の、スプラッシュマウンテンのあるパークが、そこに広がっていた。

スニークオープン期間中は、一日を通してずっと運営していたわけではなく、昼間途中から入場を開始したり、突然終了したりして、テスト的運営を行っていた。ある日は午前11時からスタートし、午後4時には突然終了したり。

平日はだいたい30〜35分待ちくらいで推移し、列の最後尾が建屋入口からちょろっと列が伸びる程度で済んでいた……
というのが長年の僕の記憶にある初日だったが、メモを見返すと、スニーク中の最初の土曜日には125分待ちまで伸びた、と記録してあった。
平日も75〜80分は当たり前にあったようだ。
自分の記憶、頼りにならなすぎだな。

この3週間の予行期間が、僕らを確実に鍛え上げていった。
最初はドキドキしていたかもしれないが、少しずつ日常と化していって、これが当たり前になっていく。

そして。

ついに10月1日。
オープン初日がやってきた。

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あっくんさん

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元TDLにてアトラクションキャスト勤務を経験した十数年間を回想する場。このブログはそんな僕の、やすらぎの郷でございます(笑)。

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