みなさんこんにちはー!
あっくんさんです。
色々残っているキャスト時代のアイテムで、最もキャストの証とも言える道具。
それは、ネームタグです。
ただの名札とは違います。通常バージョンはミッキーのイラストが上に入っています。
これ、いつもらうのかというと、入社式の終わり頃に、インストラクター(講師)の方が一人一人に配布してくれるんですよね。
入社式の後、ディズニーユニバーシティという全体研修があります。確か僕の時は、広い部屋で50名ほどが参加していました。午後の研修が終わりに近づくと、名前を呼ばれて順番に、前に取りに行きます。
そこで、初めて自分の名前が入ったネームタグをもらいます。
退職日に返却するまで、1日たりとも欠かさず使うアイテムです。どこの部署で勤務しようと、コスチュームを着た勤務だろうとスーツで参加する研修だろうと、必ず社内で勤務中はネームタグをつけます。
まさに、キャストの証ですね。
先日書いた舞浜戦記のタイトル画像に、ネームタグを使いました。
探してみたら、出るわ出るわ。思ったよりたくさん出てきたので、我ながら驚きました。
今回はネームタグについてお話ししましょう。
ネームタグは言わずと知れた、名札のことですね。って知ってるわ。
それではみなさん、出発でーす!
目次
ネームタグは一人一個だが、特別にもらえるタグもある
ディズニーキャストになるためにはまず、入社式に参加します。
式が終わる頃に一人一個のネームタグを配布されます。その後各部別に研修を経て(ない部署もある)、現場配属となりますが、初の現場でのトレーニングの際に、受け取ったネームタグを持参します。そして基本的には一人一個しか使えません。
ただし、途中で特別なネームタグを獲得できる場合があります。
TDL(TDR)では、パークが5年ごとの節目に、特別なネームタグを用意してくれます。僕自身が持っているのは、TDLが10周年、15周年、20周年の際に使用していたものですね。
その節目の年のネームタグは、名前の上の部分に、ミッキーのイラストの代わりに別のイラストが入っています。その年の4月15日〜翌年の4月14日の間だけ、使えます。
時期が過ぎたらもう使えないので、これは終わると、キャスト本人に譲渡されます。退職時に返却する必要がないのですが、終わる時に在籍していないと、もらえません。
確か、途中で辞める人はもらえなくて、残念がっていましたね。それで、退職時期をずらそうかと本気で悩む子もいたくらいですから。
他にもあります。
キャストとしての勤続期間が5年を経過すると、「5年ピン」というピンバッジと、それを取り付ける台座のネームタグを一つ、もらえます。
普通のネームタグは、名前の上にミッキーのイラストが入っています。が、ピンを取り付けるネームタグには、ミッキーがいません。代わりに小さな穴が開いています。
これは、退職時に返却する必要はありません。なのでキャストを辞めたら、もらえるんですね。だから僕はこうして今でも持っているわけ。
勤続ピンは、5年を節目にして、追加でもらえます。
5年の次は10年、15年、20年……と、どんどん追加でもらえます。30年勤務している方は、6個持っているわけですね。ただしもらえるのはピンバッジの部分だけ。
キャストを30年? と驚かれるかもしれませんが、本社勤務の方も対象になります。オリエンタルランド社が設立した頃から社員だった方なら、余裕でもらえているんですね。
オリエンタルランド社って、設立が1960年(昭和35年)7月11日です。設立からいたベテラン社員だと、1990年の時点でもう30年勤続です。まだパークが10周年も迎えていない時期に、30年勤続ピンをつけているわけで。
(今なら準社員で30年勤務した方もいるでしょうね。TDLが35周年を経過したんですから)
勤続ピンのネームタグを持っていると、2つネームタグを同時に使えることになります。
これ、便利なんですよね。だって、上着とかを脱いだり着たりする時に、いちいちネームタグを付け替えるのが面倒だけど、2つあると、つけっぱなしでOKなんですよ。
館内が暑いからジャケットを脱ぐ。外に出るとちょっと肌寒い時は、上着を脱いだり着たりで時間を取られます。でも2つタグがあれば、サッと着て出ていくことができる。
スプラッシュ・マウンテンやビッグサンダー・マウンテンだと特に制限はありませんでしたが、スペース・マウンテンは、館内では上着は必ず脱ぐルールになっていました。今でもそうだと思う。
ポジションを交替するごとに、館内と屋外を頻繁に出入りしますが、そのたびにいちいちネームタグを付け替えるんですよ。もう面倒なこと。おそらく1日に、10回以上付け外ししますね。あー、めんどくさ! ってみんな思ってたはず(笑)
他に、「アワードピン」と呼ばれるピンバッジもあります。
キャストが素晴らしいキャストを褒め称える賞、「スピリットオブ東京ディズニーリゾート」という賞を獲得すると、ちょっと大きめのシルバーピンがもらえます。これをもらった人は、台座のネームタグをもらえます。
僕はもらったことがないので、残念ながらお見せできません。
今度パークに遊びに行って、キャストの胸元のネームタグに、大きめのシルバーのピン(人によってはゴールドのもあります。これはスピリット受賞3回目でもらえるさらにスゴい奴です)がついていたら、ああこの人は同じキャストから認められた素晴らしい人なんだな、と思っていいでしょう。
退職の際には、最初にもらったタグだけ、返却します。
ネームタグを無くすと弁償させられる
紛失は弁償です。金額は、僕の現役当時はずっと変わらず、250円です。
250円払って買い直した感覚ですね。
ところが、なくしたからと言って、すぐ代わりを用意してくれるわけではありません。自分の名前が彫られていますからね。新しいネームタグができるまで、数日かかります。確か、3〜4日かかったような気が。
最初の頃は、わざわざ本社社屋まで取りに行った記憶があります。本社は、普段勤務している場所から離れているし、行き慣れていないから、かなり戸惑うんですよね。
途中から、運営部オフィスで手続きできるように変わったけど。
ところで、勤務中になくすとどうなるんでしょう?
実は、ネームタグなしのまま勤務はできません。ネームタグは必須アイテム。絶対につけて勤務します。
なので、他の人のを借りて、勤務を続けるんですね。
各ロケーション(職場)にはうっかり紛失したり破損させたキャストのために、代わりが用意されていたりします。大抵は、退職したキャストのタグです。
代わりのネームタグを借りると、あっこれ、この前辞めた奴のじゃん、となって不思議な気分になります(笑)
1日中、その人の名前で勤務するわけですから。
退職者の中には、問題があって辞めた人とかいるわけですが、微妙だった人の名前入りのタグだと、周りからいじられます(笑)
「あれー、この前辞めたのに、戻ってきたの〜?」
とか言われたりして。
まあ、ネームタグをなくした報いですので、仕方ない。
後輩がネームタグをなくして、でも代わりのネームタグが出払っていて、ない時。
僕が5年ピンや10年ピンのついたネームタグを使っているのを知ってるから、
「今日一日、貸してあげて」
と、リードに頼まれることがありました。
すると、僕の名前入りのネームタグをつけて、その子が1日勤務しているという。
「今日は僕、あっくんさんですから。悪いことできます!」
とか言いやがるわけですよ。
お前、全然反省してねーな、と(笑)
ネームタグはキャストの顔であり、言葉を使わない自己紹介
ここらでマジな話もしておきましょうか。
僕は、ネームタグって、言葉を使わない自己紹介だと思うんですよ。
たとえば、ゲストはキャストに何か言いたいことがある時や、声をかける時。
ネームタグを見て、話しかけてきます。
別に質問するだけなら、キャストの顔だけ見て話しかければいいわけです。でも、このキャストさん、◯◯さんって言うんだ、と確認しながら質問してきます。
これって別に、キャストを疑っているわけじゃないと思います。しかし名前を確認しつつ会話を交わせば、そこに人対人のコミュニケーションが始まる。
従業員という機械的に反応するだけの存在ではなく、一人の人間として接してくれているのが分かります。
そもそもネームタグがどういういきさつでつけることになったのか知りませんが、一つ言えることは、悪いことをしないようにという理由ではないと思います。
それは、アメリカのディズニーパークのキャストのネームタグが、ファーストネームであることからも明らかです。あちらのキャストは「ジョン」や「ジャック」といったファーストネームを採用しています。
親しみを感じられるように、下の名前で呼んでほしいからです。
身分を証明するためじゃない。一人の人間として、接します。接して下さい。そういう意図が含まれているからでしょう。
日本ではさすがに「太郎」「花子」では、ちょっと馴れ馴れしい。一定の距離を保ち、礼儀を重んじた方が好感が得られる。距離感の違いはお国柄が出ますから、しょうがない。
でも、それぞれが適度な距離を保ってコミュニケーションを取っているのは明らか。
この、適度な距離感を保つことが、最も信頼の生まれる瞬間なのではないか。ただ質問し、ただ答えるだけの間柄から、一歩進んで、特別なふれあいを生み出す道具として機能する。
それがネームタグの役割なんです。
私は◯◯と言います、だけではない瞬間を生み出すために。
キャストとして勤務していると、定型文のようなあいさつが慣れっこになってきます。
こんにちは。いってらっしゃい。
それはそれで、いい。
その定型文の向こう側へ踏み出す瞬間を、作り出す。常に特別なやり取りをしなくていいけど、それが必要とされる時に、グイッと歩み出すきっかけを用意してくれている。
それが、ネームタグの持つ役割なのでは、と思います。
顔の代わりに、見てもらうために。自分とお客様との距離を飛び越えていけるように準備させてくれる道具。
それがネームタグなのです。
それをひたすら繰り返してきた末に、傷だらけになって僕の手元にこれらが残っているというわけ。
どのネームタグも、細かい傷が無数に刻み込まれています。作業の途中でぶつけたり、落としたり、こすったり。
役目を終えて相当の時間が経過し、すっかり古びてしまったけど、その時の激闘の痕跡を残してくれています。
オマケ:ピン2個付ネームタグは僕は持っていない
時々キャストの姿を動画で見ていると、ネームタグの名前の部分の上と下の両方が出っ張っていて、ピンを2つ着けられるタイプのがあります。
あれ、僕が入社する前はあったんです。そして退職後に復活したみたいです。あのタイプの形状のが、僕の現役中はなかったんです。当然、持っていないんですよね。
まあピンを2つ同時につけるくらいだから、かなり「評価の高い」キャストが着けていい代物ということでしょうけどね。
何となくへんちくりんな形ですが、あれはあれでいいなーと思います。
★
ところで、僕はなぜかミッキーのイラスト入りの、通常バージョンのネームタグを持っていた(笑)
もちろん退職時に返却しましたよ、一個だけ。
なぜ持っているかって?
そりゃあトップシークレットだぜ。
(ていうか、数えたら9枚もあるし……)
今日はこのへんにしといたるわ(笑)
それではみなさん、さようならー!