『南部の唄』試写会とサプライズゲスト【スプラッシュ・マウンテン007】

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突然だが、ごく普通のキャストがディズニーのキャラクターと一緒に写真に写ることが、ありえるだろうか。
偶然ゲストが撮影した写真にキャストが映り込むことはあるだろう。でもそれはあくまで「偶然」だ。
今回は、偶然じゃないというお話。

僕がかなり苦労して、二十数年前の記憶を揺り起こしている間に、今回はちょっとした小ネタをご紹介しますね。

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原作映画『南部の唄』の試写会に行ってきた

ディズニーのテーマパークに詳しい方なら、スプラッシュ・マウンテンがディズニー映画『南部の唄』という作品をモチーフにして作られたことをご存知かもしれない。

ところがその肝心の作品『南部の唄』は、現在ではほぼ見ることができない。
なぜなら、全米黒人地位向上協会が本作品の黒人描写に対して抗議したため、販売中止されてしまったからだ。白人と黒人が対等に交流するシーンが誤った歴史認識を招く恐れがあるからとか。
かなり昔(僕が現役キャストだった頃)に、この作品の日本語版VHSビデオソフトが発売されていたことがあり、当時セルビデオの安売りコーナーで偶然見かけて安値で買ったというラッキーなキャストが、いた。
いずれにせよ、今では見ることができない。

1992年の夏も終わる頃。
スニークオープンの前に、『南部の唄』の試写会がオリエンタルランド本社にて行われた。もちろん参加できるのはキャストのみ。

時々、本社において様々な催しものが企画され、かなり地味に告知される。ひっそりと。だから一般のキャストは、こういった企画に興味のある人以外は開催されることに気付かず、スルーしてしまう。
僕らパーク内で働く現場の人間は、オリエンタルランド社の中では下っ端の下っ端だから、普段は本社ビルには行く用事がない。
用事があるとしたら、IDカードの再発行とか社会保険に加入する手続きをする時ぐらいなものだった。(当時は)

その試写会も、僕は自分で気付いたわけではなく、同じスプラッシュのオープニングキャスト仲間から教えてもらったのだ。
せっかくスプラッシュに来られたんだから、原作の映画くらい見ておこうよ。
そう言われちゃ、行かないわけにはいかない。

というわけで、僕を含めてスプラッシュのキャストが5人ほど集まり、勤務終了後に本社へ向かった。
ちなみに、この試写会は本社で行われる催しものでは珍しく、事前申し込みが必要なかったと記憶している。だから当日駆けつけても全然参加できた。
勤務終了後なので、スプラッシュのコスチュームを着たままシャトルバスに乗り込み、本社前で降りる。
パークの外縁に沿って舗装道路が走っており、そこを定期的に走っているバスがある。キャスト専用のバスで、アドベンチャーランド裏を出発し、最も遠い場所・トゥモローランドのスペースマウンテン裏までを往復している。
本社前停留所は、その中間に位置している。

実はスプラッシュの勤務場所から本社は比較的近い。だからわざわざバスに乗らなくても歩いていける。

試写会会場は、さして広くもない部屋で、以前も来たことがある研修ルームだ。テーブル付き折りたたみ椅子を並べると、20席くらいで室内が埋まる程度の広さだ。

案内された部屋で、椅子に腰掛けて待っていると、ぱらぱらと参加者が集まってきた。全部で20名ほどしかいない。空席もある。そりゃそうだ。名だたるディズニーの名作アニメとは大違い。
『南部の唄』なんて、ディズニー好きでも知らないようなマイナーな映画だから、好んで見に来る人など皆無なのだ。

もちろん僕自身、『南部の唄』なんて映画が存在することを、研修中に初めて知ったくらいだ。見たことなどあるわけがない。
しかし試写会の目的は、もうすぐオープンするスプラッシュ・マウンテンにちなんだ作品だ。当の純粋なスプラッシュのキャストは僕ら5人だけ。
居心地がいいような悪いような、複雑な感じだ。

やがて司会役の女性が入ってきた。
挨拶もそこそこに、まず『南部の唄』の作品紹介を行い、さっそく試写が始まる。
窓の暗幕が降ろされ、照明を消された部屋の正面にスクリーンが現れ、のんびりした映画が始まった。
『南部の唄』が公開されたのは1946年。当時は画期的だった実写とアニメの合成映画だ。牧歌的な雰囲気の、アメリカ南部の風景をバックに流れる映像は、正直言うと退屈そのものだった。物語の展開ものんびりしている。

実は僕は、この時相当退屈だったせいか、途中20分くらい居眠りしてしまった(笑)。それくらいゆったりした作品なのだ。
この時は寝ちゃったけど、後年再び見る機会があった時はちゃんと見ましたよ。

『南部の唄』のストーリーを簡単に紹介すると、アメリカ南部のお金持ちの家で育った男の子・ジョニーが主人公で、気弱な彼は、仕事が忙しい父親から放置されて寂しい思いをしていた時、黒人奴隷のリーマスおじさんが昔話をしてくれ、仲良しになっていく。その物語パートがアニメになっていて、うさぎどん、きつねどん、くまどんの三匹のキャラクターが登場する。

そのお話がスプラッシュ・マウンテンのバックグラウンドストーリーの骨格をなすのだけど、この映画の中では単なるサイドストーリーで、映画の放映時間は1時間半くらいだけど、アニメ部分は30分もないくらい短い。
だから、スプラッシュの物語を期待して見ると、がっかりする。
えっ、もう終わり?って感じなのだ。

試写会が終わると、案の定、盛り上がりに欠ける単調なストーリーのためか、参加者もちょっと退屈さを隠せない様子だ。
司会役の女性が「いかがでしたか?」とか声をかけてくれるが、さすがに退屈でした、とは言えないよね(笑)。

サプライズで登場したのは、あのキャラクターだった

司会役の女性が、
「さて、今回みなさんのために特別ゲストをお呼びしましたよ」と言った。
お、まさかミッキーでも来るのかな。

「さあ、どうぞ〜!」
入口のドアが開くと、入ってきたのはおなじみのキャラクター、うさぎどんときつねどんだ。
意外なサプライズに驚く僕ら参加者。
何か出てくることは予想していたが、まさか奴らが現れるとは(笑)。
時期にもよるけど、スプラッシュのキャラクターの三匹(うさぎどん、きつねどん、くまどん)は、パークに登場する機会が少ない。あまり出てこない比較的レアなキャラだ。
時々パレードなどに登場したりするけど、オンステージに突然出現する機会はとても少ない。
しかもこの時は、スプラッシュのオープン前だしゲストの周知度も低いし、まさにレアなキャラクターだった。

さらに司会役は続ける。
「今日はせっかく皆さんのために来てくれましたので、撮影会を行いたいと思います。皆さんと一緒に写真撮影をしましょう」

なんと!
撮影会とは!(笑)

と言うわけで、試写会に参加した僕らは、彼らと一緒の写真に写ることができた。
撮影したその場でプレゼントしてくれたのは、ポラロイドカメラで撮影してもらったからだ。
まあ、何でも参加してみるものですね。

画像1

アルバムから出すの、面倒だったからそのまんま撮りました。

最初、麦わら帽子をうさぎどんの耳にかけたんだけど、微妙だったので、間に挟もうと試みた。みんなでうさぎどんの耳の間にぐいぐい帽子を押し込もうと頑張ってみる(笑)。
でもあいつの耳の間が狭いから、うまく収まらない。
帽子のつばを折り曲げて耳の間に押し込んでみたけど、固定できず滑り落ちてしまう。結局諦めて、きつねどんにかぶせたのですね。
(僕らのしつこい帽子のフィッティングを見ていたきつねどん、半分呆れてこのポーズであるw)

というわけで僕らは一人ずつ、写真を撮ってもらったというわけ。
普通じゃありえないよね、キャラクターと一緒に写るなんて。
とてもレアな体験をした日であった。

ところで、きつねどんの相棒、くまどんは?
あの図体のでかいどんくまは、来ませんでしたねぇ。

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あっくんさん

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元TDLにてアトラクションキャスト勤務を経験した十数年間を回想する場。このブログはそんな僕の、やすらぎの郷でございます(笑)。

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