みなさんこんにちはー!
あっくんさんです。
東京ディズニーリゾートでは、従業員のことをキャストと言い、お客様をゲストと呼びます。
これは、キャスト間で行われる習慣のようなものであり、実際にお客様として来園するあなたへは、「ゲスト」とは言いません。
まあ、当たり前っちゃあ当たり前のことです。
ところで。
キャストがオンステージにいる時に、別のキャストを呼ぶことがあります。
なにかの用事があったり、声をかけ合うときですね。
キャストがお互いに呼び合う時は、「〇〇さん」と名字で呼びます。
偉い人が、目下の人に対しても、そうします。
最近の接客業では、どこでもやっているかな?
ただTDRでは、明文化されたルールです。(だったと思う)
ささいなことですが、お互いを呼び合う文化はけっこう大事なんです。
これで、その職場の内部が透けて見えます。
ちょっと今回は風変わりなお話ですが、お付き合いくださいませ。
それではみなさん、出発でーす!
目次
「さん付け」で呼び合うのは、お客様への配慮
TDRのオンステージ(一般のお客さんが行動できる場所)は、運営時間内であれば、常にゲストが近くにいることを意識しておかないといけません。
ガラガラな日・時間帯であっても、そう想定して勤務しなければなりません。
空いているからと言って、油断していると、近くにゲストがぬっと現れること、ありますからね。
僕も現役中の、ある日。
今日は空いているなぁ〜、と思って屋外にボーッと立っていたことがあります。
すると、突然背後から声をかけられたりして。
いつの間にか、回り込まれたっ!
ドラクエのモンスターかい、ってくらい不意に。
ビビりますよ、これは(笑)
空いている時じゃなくても。
すぐ後ろに他のキャストがいると知っていて。
少ししてから、そのキャストがいると思い、振り向き、
「あれさ…」
と声をかけると、キャストがいなくて、普通のゲストがいた! とか(笑)
うわっ、と驚くわけですわね。
まあ、それは自分が油断していただけですが。
★
ゲストにとっては、キャストの言葉は自然と耳に入って来ますよね。
お客様が、案内係であるキャストの声を気にするのは、ごく自然なことです。
普段は、後輩を呼び捨てしているとします。
親しいからこその呼び捨てです。
いつもと同じ呼び方を、オンステージでしてしまったとしても不思議ではありません。
でも。
同じ名前のゲストもいるわけですよ。
特にありふれた名前ならなおさら。
普段「田中」って呼んでた後輩を、オンステージで同じように呼んだとします。
「おーい田中ー!」
でも、近くにいたゲストの中に、実際に田中さんがいたら?
自分が呼ばれたように勘違いするかもしれません。
そりゃ失礼に当たりますよね。
だから、オンステージではお互いを呼ぶ時は、その人の苗字で呼びましょうね、という文化があります。
キャストはお互いに対し、敬意を示すべき文化を持っている
苗字で呼ぶのは、そういうゲストに対する配慮もありますが。
他にも、相手(のキャスト)に対する敬意を示すためだと思います。
僕なりの解釈で言うと、キャストがお互いにどう呼び合うかは、ゲストから見てどんな関係で成り立っているかを示す機会なんですね。
キャストだってお仕事なんだから、上司と部下、先輩と後輩という関係があります。
ただ、それを思いっきり前面に押し出すと、ごく普通の日本企業の文化として映ります。
それ、確かに普通なんですが。
普通の日常の一風景を見せることが、独特の舞台の世界観を壊してしまう恐れがあります。
働いている人なら、そこに職業人としての典型を見てしまいます。
ああ、うちの会社と同じだな、と感じます。
普通であるがゆえに、日常なんです。
テーマパークのコンセプトは、非日常を楽しんでもらうことにあります。
日常の生活から離れてもらうためのパークなのに、普通の日常が混じり混んで来るのです。
園内にいて、近くの高層ビルとかが見えると現実に戻ってしまうということ。
だからたくみに隠しているわけで。
キャストの言動にも、配慮が必要なんです。
もちろん、時には先輩キャストが後輩をあだ名で呼ぶことはありますよ。うっかり呼んじゃうことはなくもない。
また親しみを込めてあだ名を使う場合もある。
なんなら、ゲストへ「彼はいつも何とか君って呼ばれています」とか紹介しちゃうこともあるかも。
(カヌーメンにありがちですね。
船首「私は△△と申します。そして船尾を務めるのが、〇〇君でーす」(←本名じゃない呼び名)
船尾「〇〇です、よろしくぅー!」
なんてあいさつを、よくやってます)
そんな例外を除けば、慇懃無礼な感じで呼ぶのが、無難かつトラブルを避けやすい呼称です。
★
キャストというのは、お客さんにとってはただの係の人。
係の人という意味では、先輩・後輩、社員・アルバイト、みな同じです。
役職があっても、「ゲストのために働いている人」という意味においては、同列に位置する。
誰が先輩で誰が後輩だとか、この人はベテランでこの人は新人だ、という人間関係は、ゲストには必要ない。
ゲストにとっては、キャスト同士の序列なんか、関係ないんです。
長老だった僕が、新人の前で後輩(中堅レベル)を呼ぶ時も〇〇さんと呼ぶ理由
それに付随して。
僕はキャスト生活の終わりの方で、いつの間にか、スプラッシュでは大御所というか、長老的存在になってしまいました。汗
自分と同じくらいの経験を持つ人はいないって状態です。
同じ時期に入ってきた人達はみんな去っていき、僕が取り残された感じです。
100歳を超えているお年寄りって、みんなこんな気分なんじゃないかな、と思いつつ生き延びていた感じですかね(笑)
周りはみんな後輩です。
何年も勤務していると、僕の後輩たちはやがてベテランになり、指導する立場になります。
僕にとっては後輩なので、普段は「〇〇ちゃん」、とか「△△〜」とか呼び捨てにしたりするわけですね。
で、新人さんが入ってくると。
そんな時、新人さんに何かを教える機会があったとします。
その新人さんの前では、
彼ら指導者を、「〇〇さん」と呼ぶようにしていました。
ホントは〇〇〜、って呼ぶのが一番ラクなんですけどね。
なぜかというと、
新人さんからすると、自分に教えてくれる立場の人が、下に見られているわけです。
僕からすると、「後輩」というだけのことで。
でも、新人さんにとっては、立派な先輩(に見える)です。
僕が100歳だとすると、
新人さんは1歳。
僕の後輩は30歳、40歳って感じですかね(笑)
そりゃあ、100歳から見たら、40歳なんてひよっこですよ。
30歳はお子ちゃまです。
でも、新人さんから見たら、40歳は超オトナです。
新人さんにとって、どんな風景が見えるかを、想像します。
僕が「おーい、〇〇〜」とか呼んでいたら、
ああ、この人は大したことない人なのかな。
そんなことを、新人さんに、思わせちゃいけない。
礼儀正しい新人さんなら、そんな考えは抱かないでしょう。
でも、中には、人を見る新人って、いるんです。
特に若い子であれば、なおさら。
人を見る、とは、この職場の上下関係を見て、従うべき人とそうでない人を区分けすることです。
40歳の人は大したことないから、指示に従わなくていいや。
そんな感覚を、持ってほしくない。
従う人と従わなくていい人(頼りない人)を区別する習慣がつくと。
オンステージでも、それが出ます。
人を「見て」対応を変える人になると、やがてお客さんを「見る」人になってしまいます。
この人は丁寧に対応するべきお客さん。
この人は、適当に接していいお客さん。
適当に接するというのは、「態度の悪いゲスト」は、それなりの態度で接していいと考えてしまうこと。
もちろん人間ですから、失礼なゲストがいたら、気分が悪くなります。
でも、それを外に出したら、失礼なゲストと同罪ですよ。
失礼な人には、失礼なお返しをしていい。
それはちょっと違います。
何でも我慢しなさいって言うわけではないけど、率直に態度に出すのは違うと思います。
人を見る習癖はなかなか変えられるものじゃない。
新しい職場に入って最初の段階で何をやっても、人を見て態度を変える癖は、すぐには変えられない。
でも、最初にこの職場に入ってきた、まだ1歳の新人さんに、40歳をナメるような感覚は持ってほしくない。
だから、僕は新人さんが入ってくると、
後輩を(つまり全員を)、さん付けで呼ぶようにしたのです。
それが影響を与えたかは分かりませんが。
少なくとも、「30歳、40歳の後輩たち」は、表面上はナメられないようになったと思います。
個人的にナメられているのは、止められないけど(笑)
何事も、最初が肝心ですからね。
★
というわけで、今回は僕が長老だった時の話で終わりたいと思います。
それではみなさん、さようならー♪