みなさんこんにちはー!
あっくんさんです。
あなたは仕事で失敗したことはありますか?
もしキャストをしていたら、失敗することってけっこうありますよね。キャストに限らず、どんな仕事も始めた頃は失敗は避けられないものです。
普段勤務していて、うっかり失敗してしまった。その結果、ゲストはもちろん、周りのスタッフにも迷惑をかけてしまった。この失敗をできれば取り戻したい。
取り戻す方法はある?
答え。
ありません。
覆水盆に返らずという言葉がありますが、二度と元に戻すことはできないです。
戻せないものは仕方がない。だから、考え方を変えるしかないのです。
東京ディズニーリゾートの新人教育は『OJT』という方法を採用しています。今やどこの職場でも当たり前のように聞く『オン・ザ・ジョブ・トレーニング』のことですね。
これは悪い言い方をすれば、未熟でも構わないから現場に放り出し、だましだまし慣れさせていく、という意味です。まだ半人前の人も現場へ投入させて、徐々に慣れていってもらう。そして少しずつ一人前に近づいてもらう。
結論。失敗せずに一人前になるのは実質上無理、ということ。
だって未熟な状態で独り立ちすれば、何かしら対処できないことが起きます。慣れる過程で確実に過ちをおかすはずなんですよ。
でも中には慎重な人もいて、いちいち細かいことまで確認してから行動する人もいます。
でも現場ってそう都合よく質問できる機会なんてありません。もう、ぶっつけ本番でやるしかない。
ステージに立った俳優がセリフを忘れたからと言っていちいち台本を見返しますか?ってことです。
失敗をさける方法は、ないんです。
今回は、そんなお話をしますね。
それではみなさん、出発で〜す!
目次
失敗することで成長への最短ルートを進める
僕が現役キャストだった頃。いろいろと失敗したものです。原因はともかく、やってしまってからガックリと落ち込んで、なぜこんな簡単なことを失敗したのだろうと悩んだものです。
結果としてゲストには迷惑をかけたことも。それはもう、変えることはできません。
じゃあどうするか。考え方を変えるしか、ありません。
一度迷惑をかけてしまった過去は変えられない。
でも、今日来園する(別の)人へは、変えることができる。今日、行う分に関しては「変える」ことができます。
だったら今後来る人々へ、過去の失敗分を取り戻すくらいのいい仕事をすればいい。
ということ。
もちろん、失敗した時にかけた迷惑を、当人へ返すことはできません。その分を他の人へ返すことが、今できる唯一のことなんですね。
変えられないことをいつまでも悔やんでいても何も変わりませんから。そんな非生産的行為はやめましょう。
ところで、なんで東京ディズニーリゾートは、こんなやり方で教育するんでしょうか。
それは、現場に出てみるとよく分かります。いくら時間をかけて座学やロールプレイングを行っても、現場とは環境が異なります。決められた手順に従って教わった通りにやろうとしても、そうは行きません。
なぜか。
相手が人間(お客様)だからです。
こっちが決められた順番にやろうとしても、ゲストが予想もつかないことを求めてくる。または基本から外れたイレギュラーな事象が多々発生する。予想外なことまで練習を重ねることなんて、意味がないんです。何かが起こったら、その場で解決するしかない。
解決方法は、現場を知ることでしか学べないんです。
だからこそ、失敗はスキルアップのための最短ルートなんですね。
失敗しながら覚えて行きなさい、とTDRの教育体制が示してくれているんです。
だから、失敗しながら学んでいきましょう。失敗を糧にしつつスキルを上げていけばいいんです。
その考えについていけない人(=失敗を否定する人)は、その時点ですでにオンステージに立つ資格を失っていると思います。
さて、こんなことを言うと、
「じゃあ失敗した時のお客様の立場はどうなるんだ!」
と言う人いますよね。じゃんじゃん失敗しなさいなんて言ったら、それこそ失敗の被害に遭うのは当のゲストですから。
ウォルトディズニーの有名な言葉の中に、こんなのがあります。
皆さんも聞いたことがあるかもしれません。
『ディズニーランドは永遠に完成しない遊園地だ』
というもの。ディズニーのパークは、常に進化を遂げている。
今もその真っ最中なのです。
失敗がダメなんて言ったら、じゃあ今のパークは未完成ですよ。それに不満はないんですか? ってことです。
昨日より今日の方が完成度は高い。今日より明日の方が完成度は上です。
昨日入園した時より、今日の方がよかった。前日の入園時は損したからお金返せって言いますか?
そんなことを言っていたら、そもそも経営が成り立ちませんよね。
結局、今日来た人には今日時点での完成度で楽しんで下さい、とお願いしているんです。
もし満足出来なかったら、その分は次回までに整えて対策して進化させますから、どうぞ許して下さいね、と頼んでいるんです。
そうやってゲストのみなさんに協力してもらいながら、進化を続けていくことを許されている。
それが、永遠に進化し続けていく形態のテーマパークが成立している理由です。
だから、失敗するあなたは、まだ進化の途中にあるパークの最前線に位置しているのですよ。あなたの進化がパークの進化そのものであり、それが本質なのです。
あなたが失敗を乗り越えてスキルを上げて、より素晴らしいレベルに到達し、見違えるようなクオリティのキャストになった時、初めてパークを進化させた一助になったと言えるのです。
だから、失敗を恐れないで下さい。失敗をためらわないで下さい。
進化を続けることを怠らないで下さい。
そうは言っても上司や先輩はあなたを責めるかも…
しかし、そんなことを言ってもやはり先輩や上司は怖いし、あなたを責めてくるでしょう。
失敗してもにこやかに笑っていられる人は少ないです。先輩の中には、あなたの失敗を責める人がいます。責めない人もいます。
責める人は、厳しさが仕事の質を高めると信じている場合と、単なる個人攻撃が目的の人がいます。
責めない人は、責めるより異なる方法で成長を促す人と、単に優しいだけの人がいます。
どんな先輩に当たるかは運次第です。
しかし、あなたは先輩の態度を必要以上に深刻に受け止める必要はありません。単なる八つ当たりや個人攻撃をまともに受け止めても、あなたは成長しません。ネガティブな感情に支配されても、あなたは反省こそすれど、成長には至らないからです。
逆に、アドバイスを完全に無視すると、あなた自身が成長するきっかけを失います。
せっかく先輩が効率よく成長するアドバイスを与えてくれているのに、耳を貸さないのはもったいないです。
また、単に優しいだけの先輩の声だけを取り込んでいたら、あなたは現状から抜け出そうとしないでしょう。
まあ特に目立った失敗もなかったし、これでいいか。とほどほどに満足していたら。
とても残念なキャストになって、なんだか最近つまんないなー、辞めちゃおっかな、という気分がどんどん膨れ上がってくるでしょう。
だって、パークが進化しているのにあなたが進化をやめてしまったら、明らかに『周囲から取り残されて』しまいます。
そりゃ、つまらないと感じて当然ですよ。
個人攻撃をする先輩は、過去の自分を救済している
なぜ意地悪な先輩は、失敗した人を責めるのでしょう?
僕はこの問いに、こう答えます。
その先輩は、かつて自身が新人・後輩だった時に、その頃の先輩から同様の仕打ちを受けていた、それをなぞっているだけだ、と。
可愛そうにその先輩は、自分が昔受けた厳しい指導を、効果があったと勘違いしているのです。自分が今のように成長できたのは、先輩の厳しい指導があったからだ、と。
これは半分正解で、半分間違いです。
厳しい指導は一定の効果を生みます。自分自身が勝手に成長しても、これは先輩のおかげだと固く信じ込んでしまいます。だから、あなたに対しても、
「未熟な後輩には厳しい指導が効くんだ」と信じ込んでいるのです。
しかしこれは間違いです。残念ながら、半分の効果しか生みません。
厳しさで教育すると繊細な人はついていけない。
優しさで教育すると大雑把な人は成長意欲を失う。
どちらにしても半分を取りこぼす戦略であり、効率が悪いのです。
もしあなたが今真剣に悩んでいるなら、こう考えましょう。
あの先輩は過去の自分を救おうと必死になっているんだ。それで、私を身代わりにして過去へレスキューしに来ているんだと。
それを真に受けるのがいかに無意味か、分かりますよね? 本当にあなたを育てようとしているのではなく、先輩が自身を救おうとしているのだから。
次に、今のあなたは、先輩の過去と共通の部分があるのかな? とも想像してみましょう。
先輩が自身を救おうとしているこの機会に、『あなたが将来、過去へ自分自身をレスキューしなければならなくなる恐れ』を、今このタイミングで回避しましょう。
成功すれば、あなたが未来において、自分の後輩に対して行おうとする、『自己救済行為』をせずに済みます。
簡単に言うと、『悪しき風習を自分の世代で終わらせる』ということです。
いやですか?
自分だけそんな苦しい作業をするなんて。なんで自分が損な役回りをしなきゃいけないんだと思いますか?
無理はしなくていいです。強制ではないですからね。
だから、気に入らない先輩が許せないなら、逆らいましょう。反論してもいい。無視するもよし。何なら喧嘩してもいい。
先輩が賢明な人であれば、反抗的なあなたを見て、過去の自分は救えないことに気付くかもしれません。
でも、あなたもまた、過去の自分を救えないことを将来、自覚することになります。だってあなたは、悪しき風習を持続させることを選んだのですから。
(……ここらへん、何を言ってるのかさっぱり意味分からなかったら、無視してください)
★
何度か、ことによってはずっとかもしれませんが、あなたと先輩は、同列同レベルでやり合うことでしょう。後年気が合って、あなたは先輩と仲良しになるかもしれないし、一生涯、憎む相手になるかもしれません。
どちらもあり得るんですね、不思議なことに。
自分の代でいさかいが終わらなかったとしても、それはそれで構いません。
それはあなたの役目ではない。
なので喧嘩別れや、トラブルを起こして退職解雇もやむなしです。
この時点で職場を去ったなら、この話はここで終わりです。
でも。
もし、続いたなら。あなたもいつか、そのムカつく先輩と同じ立場に立つことでしょう。
そして、過去の自分によく似た後輩に振り回されることでしょう。
パークの進化を皮膚感覚で感じられる感動を知りたくない?
だから僕は現役の時に、失敗した子を責めたことはありません(安全を損なうケースを除いて)。むしろ失敗したら、ああこれでまた少しパークが良くなったぞ、進化したな、くらいに考えていました。
その時は、誰か先輩が失敗の尻拭いをさせられたかもしれません。自分か、あるいは誰かが割りを食ってゲストに怒られたかもしれないです。
でも、広く広く全体を見渡した時に、きわめて、きわめてゆっくりと向上しているのが感覚的につかめるようになります。
小さな部分から目線を上げて広く見渡せば、確実によくなっていることに気づけたりします。
大きな動きとしての進化に、体感で気づけるようになったら。(あなたにとってはまだまだ先のことですが)
めちゃくちゃ感動しますよ。
『こんなによくなったんだ……!』と、全身で感じ取れるくらいのレベルになったら。
進化の努力を続けていれば、その時が必ず訪れます。
その時が来たら、おめでとう。
あなたは立派な、パークの進化を担う一部になれたということ。
その時が来るのが、待ち遠しくなりましたか?