あんまり乗れません。
というか乗れるわけがないのです(泣)。
なぜなら、自分の勤務時間は何かしらやることがあるからです。やることがないなら、勤務時間から除外するから。
人件費は常にぎりぎりに削っているのでほとんど無駄がなく、したがって乗る時間もない。
退勤時間になると、すぐ帰れと言われます。
乗る時間がないのが、乗れない一番の理由です。
また、しょっちゅう乗っていたら、ゲストの待ち時間もほんのわずかですが増えてしまいますし。
ただし、勤務時間内にお仕事で乗ることはたまにあります。
アトラクション内部の施設、たとえばアニメーションと呼ばれる人間や動物のメカ(人形)や、その他動作する機構が正常に動いているか、定期的にチェックしないといけません。
それには人間が乗って見に行くのが一番確実です。
というわけで、
「今から乗ってきて」
と言われることがたまーにあります。
それを『ショーチェック』、『ライドスルー』と呼んでいます。
当たり前ですが、一番前の席には乗れません(笑)。
通常後ろの席に、目立たないように乗ります。ゲストの後ろの最後席に、こっそり乗るんですよ。
目次
スプラッシュ・マウンテンでは一時期キャストが一列目に乗っていたことがあった
ただし!
スプラッシュ・マウンテンでは、とある時代の一時期に、キャストが一番前に乗ることがありました。もちろん運営中にですよ。
ゲストが普通に乗っている時に、一列目に乗ります。
なぜそんなことをしたのか? 理由があります。
実はその頃、滝つぼにボートが落ちたあとの部分で、水濡れが激しすぎるというクレームが頻発していました。降り場に戻ってきたゲストが、水をかぶったようにびしょ濡れになって帰ってきたのです。
そのような報告が急増しました。
リード達は色々検討し、メンテさんとも原因を探ったのですが、はっきりしたことはつかめませんでした。
その後、水濡れが多くなるのには、いくつかの理由があると分かってきました。
たとえば、風が強くてはねた水を多めに舞い上がらせた。雨がたくさん降った後で、水路の水かさが増していた。少しだけボートのスピードが早くなり、勢いがついて水しぶきが多めに上がった。など。
原因はともかく、日によって水濡れが激しかったりそうでもなかったりしたようで、リード達は日々警戒していました。
そこで、今日はどのくらい濡れるんだろう、と計測するために、キャストを乗せて試してみることにしたのです。
当然、一列目に乗せます。
そしてそのキャストが戻ってきたら、実際の濡れ具合を確認したのです。
僕も実験台になったことがありました(笑)。
気まずいです。2列目以降に普通にゲストが乗っていますからね。
なんで係の人が一番前に乗っているの?ってお客様は思ったでしょうね(笑)。
実に不自然。
ボートが屋外を進んでいるときも、妙に注目されているみたいで、居心地が悪い。
僕はボートに乗っている時、ちょっと体を縮こまったようにして乗ってました。
そして滝を落下します。普段キャストが乗る時は、座席の下に隠れたり、かぶっている麦わら帽子で顔を覆ったりしますけど、この時は逃げられない。
っていうか、逃げちゃ意味ないし(笑)。
で、戻ってきたら、リードに濡れ具合をそのまま見せに行きます。顔を拭かないでそのまま戻る。前髪からしずくがポタポタ落ちるままに、急いで戻ります。
濡れたらその「まんま」を見せるってわけ。
「うーん、けっこうひどいね」と、リードがコメント。
「今日は大丈夫じゃないか?」とか。
そんな長期間ではなく、ほんの2週間くらいだったかな、そんな時期がありました。
しかし、日本人はやっぱり濡れるのは好きじゃないのですね。
外国人だと逆に水濡れが足りなくて不満みたいですね(直接言われたことがないですが。言われても外国語じゃ分からんですねぇ)。
開園前と閉園後のスキマに、乗るチャンスがあったりなかったり
通常運営時間外だと、たとえば開園前とか閉園後はどうでしょう。
開園前は、オープニング作業があります。
朝、スプラッシュ・マウンテンは開園2時間前から(リードは2時間半前に出勤してくる)、準備を始めます。
これは大型アトラクションの中でも最も早いんじゃないかな? シーのアトラクションならもっと早いところもあるのかもしれないけど。
(僕の想像ではおそらくないと思います。なぜかというと、シーのアトラクションはランドより後にできたから、おそらくシステムが新しく、短時間でオープニング/クロージング作業ができるように設計されているはずだから)
開園前作業が終わると、どのアトラクションもテスト走行が行われます。
その際に、時々乗ることができましたね。
スプラッシュの開園前は、ほぼ乗れません。ちょうどテスト走行(航行)中にシフトに入っている人は他にやる作業があるからです(泣)。
ただ、リードは必ずショーチェック(正常に作動しているかの確認作業)をしないといけないので、開園直前に必ず一周乗ります。
リードが忙しい時に、他の誰かに任せることはあります。
でも遊びじゃないので真剣にチェックしないといけない。トレーナーが代わりに見てくることは割とありました。
★
これがビッグサンダーマウンテンだと、一周が2分ちょっとなので短いからか、キャストがけっこう乗れるんですよね。
開園前の準備が完了した時も、リードが
「よし、乗っていいよー」
とか言って、その場にいた数名が乗れちゃうんです。よーし最後尾に乗っちゃうぞーとか言ってみんな乗り込みます。
もう好きな列に、バラバラに乗るもよし。各自が一席独占してもオッケー。
まあ大体二人で一列に乗ってましたが。
で、コンソールについているキャストだけは乗れないので、お見送りします。
このお留守番役を、リードがやってくれることもあったりして。
閉園後も、割と乗れる機会がありましたね。
いいな、ビッグサンダーマウンテンはこんなに乗れて、と羨ましく思ったことがあります。
★
スペースマウンテンは、本当に乗れない。
びっくりするくらい乗れなかったな。数カ月間やったけど、乗れたのはトレーニング初日の開園前に一度乗ったくらいかな。とにかく他のキャストが乗っているのを見たことがない。
いや見ているヒマなどないんですが。
乗りたい(と言っている)キャストがあまりいなかった覚えが。なんでだろう?
★
ホーンテッド・マンションは、逆にみんな乗りたがらない(笑)。
特に最後のゲストが乗って、次の乗り物にキャストが乗るんですけど、あの時に乗りたがらないキャストが多かったな。
やっぱり最後に乗るのは一人だけだし、怖いみたいです。
女の子たちは、
「あ、どうぞどうぞ。代わりに乗って下さい」
とか言って、見事に遠慮する(笑)。
アトラクションに乗ることは、勉強にもなるし癒やしにもなる
さて、スプラッシュの話に戻って。
閉園後。
アトラクションは最終ゲストが乗った後の、次の乗り物に、キャストが乗ります。
これは、アトラクション内にもうゲストが残っていないことを確認するために乗ります。あとショーチェックの意味もあります。
スプラッシュでは、当初は列の入場が終了した時に、最後尾についたキャストがそのまま乗り場まで最終ゲストについていき、その勢いでボートに乗れちゃう。
しかし自分のシフトとかその他の理由で交替しなきゃいけないと、乗れなくなったりします。
よし、今日は最後尾につけたぞ、これでラストは乗れるかな〜とウキウキしていたら、途中で交替が来たりしてガックリ、と残念な結末になったりして。
最後尾になって(それ自体が滅多にあるわけじゃないのでなれたらラッキーです)、何とか乗り場までたどり着いたと思ったら、乗り場のキャストが代わりにボートに乗ったりして。リードからの指示でそういう時もあります。
仕方ないですね。
くっそー、リードの○○さんは乗り場のポジションの人を乗せるからなー、とガッカリしたり。
でもたまに、
「乗り場にいる人で乗りたい人、乗っていいよ〜」
と言われることもあります。
リードによってはそうしてくれる人もいて、その時だけは「やったー」と喜んで、みんなで乗っていきます。
これ、言ってくれるリードはやっぱり人気者でしたね!(笑)
いやー今日も疲れたねー、お疲れお疲れー、とか言いながらボートに乗ってぐるっと一周回ってくるのは、とても癒やしになりますね(笑)。
みんな、もっと乗れるといいのにね!