給与明細から見るキャストの待遇と、早く辞めたかった話

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給与明細の束
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今だから正直に言うけど、最初にキャストになった時は、実は一刻も早く辞めたかったのです。

今回はその理由をお話ししましょう。

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給与明細もパークと同様、進化している

僕はほとんどの給与明細を保存しておいたのだが、それは自分の勤務時間と給与が正確か後で確かめるためだ。明細自体がお金になるわけじゃありませんからね。
でも給与明細って、なぜかもらえるのが嬉しいし、早く中を見たいと思ったものだ。自分がどれだけ勤務したか、いくら稼いだかは知っているのに。謎の感情だ。

ここで僕の最初の頃の給与明細を見てみよう。平成3年5月のものだ。

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僕がキャストデビューしたのが平成3年3月(正確には3月はトレーニングだけで終わってしまい実質デビューは4月から)なので、その翌々月ということになる。この前の月のもあるが、3月分はたった4日しか勤務していない。そして4月分は汚れていたので5月を掲載した。なにせ27年も前のものですので……。

当時はまだアトラクション(ロケーション/部署)名が明記されておらず、ただウエスタンランドとのみ記載してある。この数年後にようやく部署名が入るのだ。

最初の数ヶ月間は累積勤務時間の記載がない。このあと、7月分から、準社員給与明細書、の文字の下に累積時間が入る。

表紙をめくると下にもう一枚の見開きの紙面が貼り付けてあり、マスクプリントが施されている。この次のページが明細の紙面ですね。

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で、ここにはウォルトの名言がしっかり載っている。味な真似をするなと思ったものだ。こんなのを毎月見ていたら、誰でもディズニー教に洗脳されちゃうよー(笑)

しかし、この名言はやがて消えてしまいます。数年後にサイズも縦長に変更され、印字も刷新されたのを機に、この中表紙は真っ白になります。ちょっとだけ寂しかった記憶が蘇りました。

ディズニーキャストの給与で面白いのは、着替手当があることかな。これはコスチューム勤務の時に(ほとんどですが)付く手当で、一日あたりだと108円。つまり時給から計算すると着替えには約8分かかるということか。コスチュームによってはもっとかかるものもありますけどね。この額はアトラクションによって変動することはなく、一律この金額が支給される。逆に言えば、コスチュームを着ない勤務の時はつかない。

当時は時給900円スタートだった。今は100円上がってますからね。羨ましい。

それから十数年。

ついに退職直前あたりだと、明細も進化してますね。

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累積勤務時間が上の方に表示されています。
25241時間かー、よく働いたわな。

最後の給与明細は、本人の手には入らない

ところで、勤務した最後の月の明細は、手にすることができません。
なぜかと言うと、通常明細をもらえるのは、振り込み日の数日前に、直接勤務場所(自分のロケーション)に届けられるから。
当月の勤務分の給与は翌月の15日に支給。大体振込日の3日くらい前に、給与明細が配布されます。

各部署の明細はアトラクごとにひとまとめにされ(運営部のオフィスの方が数百名分をロケーションごとに仕分けしていたようです)、それをリードなどが自分の職場オフィスまで持ち運びます。(時々、勤務前に運営部オフィスに立ち寄った際に、今から出勤ならこれ持って行って、と言われてスプラッシュの全員分の明細を束で渡されて持っていったりしたなぁ)

僕はその年の10月末退職だったため、最後の明細が配布される翌月にはもう辞めているので、受け取りたくても手に入らないのです。なんという理不尽な制度なんだ!

だから退職者の明細は常に捨てられる運命にあります。(郵送してくれるという話も一時期ありましたが、少なくとも僕は受け取っていない)

退職していった子たちの明細が職場に数ヶ月間残っていて、捨てるに捨てられず、でも本人が受け取りに来るわけでもないので残していたけど、仕方ないからゴミ箱へ……というのが日常風景でした。きっと僕の明細も誰かが処分したことでしょう。
ま、最後の月は有給消化でほとんど勤務していなかったので、記載はスカスカだったはずだ。

準社員というのは響きはまともだけど要するにアルバイトですから、まあこんなものです。

キャストは夢を追う仕事か、それとも現実を見据えた職業か?

正社員でない我々準社員キャストは、週5日勤務の「専業」キャストと学生を中心とした「土日」キャストがいました。学生さんはいずれ卒業していくので、短ければ一年以内、長いと4年みっちり働いてキャストを「卒業」していくわけです。

僕を始めとする専業キャストはいわゆるフリーターですね。

ところで、キャストという職業は、常に二択を迫られています。自分の夢を追うために飛び込む世界か、それとも一時的な遊び感覚で期間限定で働く典型的なアルバイト業か。

どうしてもテーマパークで働いてみたい人は、思い余って応募して、勤務して初めて理想と現実の狭間で悩み続けます。そこで失望すれば運良く(笑)別のまっとうな職業に就くわけです。

変に希望を見出してしまうと、僕みたいにずーっと続けてしまいます。
まあ、どうするかは本人が決めることです。やりたきゃやればいいし、将来の進路が気になる人は辞めればいい。

僕の結論はこうです。自分の人生は自分で責任を持て。それ以上でも以下でもありません。他人がどう言おうと気にしない。好きに生きよう。それだけです。

この給料じゃやって行けない、という危機感

さて、今回の本題はそんな話じゃない。

キャストになった当初の僕は、決定したシフトから今月分の給与を計算して、これでは生活していけん!と焦りまくったのですよ。

キャストになる直前は、工事現場の日雇いバイトなんぞをしていて、日給換算で8000〜9000円くらいはゲットしていたので、デビューして、自分のシフトを確認して、愕然としました。

一日の勤務時間が短い。早番だと、8時45分〜15時45分とか。休憩時間45分〜60分を引くと、実質6時間。いや、まだ早番の方がましで、遅番だと6時間勤務や5時間半のシフトとかもある。

まずい。これじゃ生活していけない……。

最初に交わした契約が3ヶ月間。7月までは拘束されるのか……
辞められるまであと3ヶ月、それまでなんとかしなきゃなとそればかり考えていました。契約期間が満了したらすぐ辞めよう。そればかりを考えながら勤務していたのです。
(だからミスばっかりしてたのかもしれない!)

しかし僕が入ったのがちょうど春休みの真っ最中。27日にトレーニングが終わり、休みを挟んで4月1日デビュー。

そんな僕の当時の心境も、3ヶ月後にはすっかり消えてなくなってしまう。
ただしそれは、決してポジティブな方向にでは、ない。

(つづく)

ちなみに、ウォルトの名言とはこれですよ。

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思いっきり意訳してみましょうか。

『世界中で最も素晴らしい場所を夢見て創造し、デザインし建てるなんて誰にでもできる。でもね、それを実際に叶え、支えているのは、人(キャスト)なんだよ』

色々な解釈があると思いますが、僕はこういう意味にとらえています。

ただちょっとひねくれた解釈をすると、ウォルトはライバル企業に対して発言したようにも感じますよね。「仏作って魂入れず」じゃディズニーランドには勝てないよ、と。ガワだけきれいに作っても中身が伴わないようじゃダメなんだ。

転じて、いくらディズニーブランドが圧倒的に確固たる地位を築いているからと言って、油断してはならないよ、とも言えます。

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あっくんさん

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元TDLにてアトラクションキャスト勤務を経験した十数年間を回想する場。このブログはそんな僕の、やすらぎの郷でございます(笑)。

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