今年2020年最大の話題・社会問題といえば、言うまでもなくコロナですね。
国境を超えて蔓延するウイルスによって、文明社会は深刻な脅威にさらされています。世界中の人々の生活が、あらゆる社会構造が根底から覆されようとしています。
この状況の中、ドラマ制作も無事では済みません。連続ドラマは放送を中止したり、予定回数を満たさないままに放送終了となってしまった作品もありました。
こんなご時世の中、私達コンクール挑戦者は、どんな作品を応募すればよいのでしょうか。
ひょっとしたらシナリオコンクールの応募すらも休止してしまうのか、と不安を感じないのは、僕だけではないはずです。
現状、日本国内のコンクールはどれも継続しているようですので、応募できなくなる恐れは回避されているようで安心しました。
では、今年2020年のシナリオコンクールの展望はいかがなものでしょうか。我々コンクール挑戦者は、どのようなシナリオを書けばよいのでしょうか。
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今年のコンクール応募はコロナ禍をどう描くかが焦点になる
一つ言えることがあります。
コロナを作品に含めるか、含めないか。これが非常に重要な意味を持っています。
作品にコロナの存在を取り上げて書く場合。
2020年11月の時点では、ようやくワクチン完成のめども立ってこれから量産も始まるようですね。
おそらくコロナ禍は、あと1〜2年で収束へ向かっていくでしょう。
コロナをテーマやアイデアに含めてシナリオを書いた場合、受賞作品が映像化される時には、ほとんどは「過ぎ去りつつある話」になってしまいます。
つまり、作中でコロナに苦しむ人々を描き、それが映像化されることになり、放送される頃には、「ああ、そんな大変な時期もあったね」と。
今現実に苦しんでいる人々を描くことがドラマの醍醐味だとすると、ちょっと時期的に遅れてしまうんですね。旬を過ぎてしまいます。
最終審査が終わり結果が発表され、受賞作品が映像化へ向けて動き出すのが2021年後半。その頃にはワクチンがどんどん市中に普及し、一般向けに接種が始まります。順調に行けば、かなり解決へ向かっていると思われます。
そんな中、コロナによって人生を狂わされた人が出てくるドラマは、何となく過去の話になります。まだ完全に収束はしていないでしょうが、気分的にはほぼ解決したようなものです。
たとえると、戦争が終わった直後に、戦争の悲劇を描いた作品を見るような感じでしょうか。せっかく暗い時代が終わったのに、また振り返るの? なんて感じで、今更感が強くなるのかな、と。
今現在、コロナで苦しんでいる人々は、もうこれ以上あの苦労を見せられたくない、という感覚になるかもしれません。あの窮屈な時期はもう思い出したくもない、という気分です。
別にダメだと言っているわけではありませんよ。書きたければ書いてもいいと思います。
あえて狙って、コロナ問題の総まとめ的な作品にするのなら、ありだと思います。
どちらにするかは、作者次第です。
コロナ禍を正面から書くか、完全に無視したシナリオを書くか
現状、今放送されているテレビドラマを見ると、ほとんどコロナについて触れていない作品ばかりですね。まるでコロナ禍など存在しないかのようです。
これは、ドラマの中くらいコロナを忘れて楽しんでほしい、という制作陣の意図も反映されているのかもしれません。
ただし、コンクールに応募する際は、この問題を考えないわけには行きません。
なぜかというと、審査員は今年の社会問題を反映させた作品を強く意識せざるを得ないからです。
ドラマとは、人物を通して社会を描くものです。現代社会をしっかりと描ききることが、ドラマの役目なのです。
どんなジャンルであっても、今の社会を描いていない作品は、正当な評価を受けることはできません。完全なエンタメ作品であっても、どこかしらに現代社会の様子を刻み込んでいるものなのです。
中には、今年限定だからあえてテーマに組み込む方もいるでしょうね。また、コロナに触れずにいられない方は、作品のどこかで触れるかもしれません。
ここで、注意点があります。
大きな社会問題が起きた年は、類似作品が増える傾向にあります。ライバルが増えると言う意味において、多少不利になる可能性があるんですね。したがってコロナ問題を取り上げる人は多数いると想定されます。
問題は、どう取り上げるか、です。
コロナ禍によって仕事を奪われた人を主人公にした作品。コロナによって亡くなった人を描いた作品。検査によって陽性となった人の苦しみを描いた作品。いくらでもアイデアが出てきますよね。
みんなが強い関心を寄せる社会問題は、非常にドラマにしやすい。なぜなら、誰もが自分事として捉えることができるし、登場人物に共感できるからです。
書きやすいので、大勢の人が題材に選びたくなります。ライバルが増えるということは、その分競争率が上がりますから、自分が蹴落とされる確率も上がるというものです……(泣)
もちろん、しっかりテーマとして物語とうまく噛み合っていれば、一定の評価を得られるかもしれません。
以前も触れましたが、似たような作品が同一コンクールに出品されると、審査する側も飽きてくるため、新鮮味が失われます。普通に面白いだけではダメで、よほど面白い作品でなければ注目されにくくなります。
社会問題の力を借りて書くか。
あえて話題のテーマから外れて、書くか。
作者の戦略が問われる回となるでしょうね、今年は。
コロナを取り上げない場合でも、完全に影響を無視するわけにはいかない
コロナ禍を含めない作品を書く場合について。
コロナを描かない普通の作品を書くとします。じゃあ今まで通り、普通に書けばいいよね、と思いますよね。
ちょっと待ってください。
私達の生活は、昨日までと全く同じではないんです。コロナを知らなかった時点には、もう戻れないんですよ。
たとえば日常風景を描く時。少なくともあと2年くらいは、みんなマスクをして外を歩きますよね。もう、それが普通の風景になってしまったんです。
だから、作品もそれらを想定して描かなきゃいけない。
たとえコロナを作中で取り上げないとしても、今の日常風景を書かざるを得ないんです。
まあマスク程度ならあえて描写しなくてもいいと思います。ただ人の心の部分には、コロナを含めた上での心の動きを書く必要があります。
その中で、まるでコロナのことを全く知らない人を書くのは難しいです。
三密を避ける工夫をしながら生活している我々。ドラマ中の人物たちも、それを意識した行動を取る必要がありますよね。
全然気にしないで飲食店で大騒ぎをする場面があったら、眉をひそめられるでしょう。マスクをしないで閉じた空間で、大声を出すシーンがあったら、視聴者は危険だなー、と感じることでしょうね。
そう言った細かい調整に気を配る必要があります。
でも、コンクールに応募する我々は、作品にそんな細かい配慮をする余裕のある人は少ないでしょう。どうすれば面白くできるのか、を必死に考えているレベルですから。
なので、あまり余計な配慮を要する題材は、選ばないのが無難ということです。
コロナを正面から取り上げる覚悟ができたなら、止めませんが(笑)
以上、2つの場合を考えてみましたが、どちらにもリスクがあるわけで、考え過ぎるのも無駄な感じがします。
ここで悩んでいても、作品が完成しなければ意味がありませんよね。
悩み過ぎるくらいなら、いっそどちらかに決めて、真っ直ぐ突き進むべきです。