シナリオ、書けない時は本当に書けませんよね。いくら頑張ってもダメなものはダメ。
すっぱり諦めましょう。
ただし、締め切りが迫っているとか、何が何でも書かなきゃいけない状況にあるとかなら、何とかしてやり遂げたいと思います。
そんなピンチの時でも、それなりに満足のいく作品を書きたい。
今回は、そんな多少強引にでも書かなきゃいけない時に作品を完成させるいい方法をお教えしましょう。
それは、当て書きです。
え、当て書きを知らない?
ご説明しましょう。
当て書きとは、特定の俳優を想定して脚本を書くこと
当て書きとは、
「登場人物に実在の俳優が演じることを想定して書くこと」です。
新作の映画やドラマが発表されると、あの脚本家が書く時はいつも同じ俳優が出演するな、と気付くことがよくあります。いつも同じ顔ぶれで映画や、ドラマが作られたりします。
あの人達そんなに仲がいいのかな、と思ったことありませんか?
そういう時、脚本家はほぼ間違いなく当て書きをしています。
脚本家は、脚本を書く前から主人公や脇役をどんな俳優が演じるかを最初から決めて書くことがあります。
まだ映像になっていない段階なら、誰が演じるか未定だし、誰がやっても構わないように書きます。
ただし、有名な脚本家が書くなら、ほぼ希望の俳優をキャスティングすることも可能でしょう。
あるいは執筆前に出演者が決定している時なども同様です。
このように、特定の役者が演じる前提で書くことを「当て書き」と言います。
誰が演じるか分かっていれば、その人に合わせたキャラクターを作ることができます。性格や喋り方、癖など細かい設定も可能です。書く側もイメージしやすいので、より俳優の長所を生かした作品作りができるのです。
これを、素人の私達も行うことができます。
ただし、あくまで想像の世界だけのことではありますが。
自分が好きな俳優さんが、自分のシナリオ通りに演技してくれているところをイメージしながら書きます。
さて、当て書きのメリットは何でしょうか。
当て書きの最大のメリットはモチベーションが上がること
最大のメリットは言うまでもなく、自分のモチベーションが格段に上がることです。
大ファンの俳優さんが自分の作品に登場してくれると考えただけでも嬉しいですよね。しかも思い通りの演技やアクションなどをしてくれるのです。楽しくないわけがありません。
書けないと悩んでいたのが嘘のようにスイスイ書けます。書き過ぎて困るくらいに捗ります。
なので今度は逆に抑え気味にしないと、無駄に書いてしまいます。
まあ、書けないよりはマシですけど。
次に、実在する俳優さんが演じるところをイメージすることで、どんな演技をするかが掴みやすくなり、文章化しやすくなります。
映像を頭の中だけで想像すると、完全な形ではないため、不自然なシーンを書いてしまうことがあります。
人物がそれまで椅子に座っていたのに、次の瞬間離れた位置(部屋の反対側など)に移動していて酒を飲んでいるとか。
昨日のシーンではケガをしたのに、翌朝はすっかり完治していたり(笑)。
こういう不自然なシーンのつなぎを、けっこうやらかします。もし映像にしたら、明らかに奇妙だし、不自然なことに気が付きます。
深くイメージを作り上げればそんな不自然な動作は書かないはず。
でも勢いや流れで書いていると、気がつかないうちに矛盾した動きをさせてしまいます。
そんな時、実在の俳優さんを明確にイメージすると、不自然な動作を避けられやすいかと思います。
絶対避けられるわけではありませんが、普段から好きな俳優さんなら細部まで思い描けますよね。腕の振り方とか、指先の動きとか、細かい動きも特徴を覚えていて鮮明に想像できるでしょう。
すると、書く方もどう書けばいいかが分かるし、自然な動作、行動を文章にできるはず。
当て書きの最大のデメリットは独りよがりになること
デメリットはあるのでしょうか。
考えられるのは、あまりに楽し過ぎて、面白さが自分にしか理解できないシナリオになってしまうことです。
そもそもシナリオは他人に面白いと思ってもらうためのもの。それなのに自分だけ盛り上がって書くと、独りよがりなシナリオになります。
自己満足はいけません。
また、好きな俳優さんなら捗るけど、それ以外のキャラがなかなか動いてくれない事象も起こります。
まあ主人公がどんどん動いてくれるのは歓迎ですし、他の人は脇役に徹してくれるならいい傾向かも。
さらに、お気に入りの俳優さんのイメージや、自分がやらせたい役柄しか書けなくなるのもデメリットです。
これは自分が抱くその俳優さんのイメージにもよるんですが、割と決まり切った役をやってもらいたいという願望があったりするので、それに引きずられて似たようなキャラばかり想像するからです。単調になってしまうんですね。
ちなみに僕なら、ガッキーに同棲する恋人の役を……ってそれ、ただの逃げ恥じゃねーか!(笑)
失礼しました……。
☆
時には意外な役をやってもらうことを想像してみると新しい発見があるかもしれませんよ。
他には、もしあなたがプロになった時。
好きな俳優さんだけとしか仕事をしないなんてことはまずありません。
時には好きじゃない、どころか大嫌いな俳優さんが出演して、しかもとてもいい人の役を書かなきゃならないときが来るかもしれません。
当然ですが、断れません(笑)。
自分の好き嫌いはひとまず置いておいて、仕事に徹しないといけないわけです。
当て書きばかりしていると、そんな状況でも書かないと仕事になりません。
あなたが大御所脚本家になれば別ですが、それまでは我慢、我慢の連続かもしれませんよ。
だから、当て書きに頼りすぎるのも問題だと思います。
まあ、最初は楽しく書ければそれでいいと思います。
プロになった時の問題は、実際に「なってから」考えても遅くはありませんし(笑)。