秋はシナリオコンクールの季節ですね。様々なコンクールが締め切りを迎えます。コンクールに挑戦する方は、そろそろ追い込みに入っているのではないでしょうか。
毎回同じコンクールに応募している方、または色々な種類のコンクールに出しまくっている方、様々だと思います。
でも毎回受賞を逃している方にとっては、コンクールって本当に公平に審査してくれているんだろうか、と疑問を感じる方もいることでしょう。
なんとなく、怪しいんじゃないかな。いや、実際に受賞している人はいるしなぁ……。
そして、どうやったら受賞できるんだろう、と思い悩む方、少なくないと思います。
そこで!
僕が知りうる限りの情報をこっそりお教えしましょう。確実にコンクールに受賞する方法は……
ありませんっ!
で、納得する方は一人もいませんよね(笑)
でもそれが現実ですよ。
そんなものは、ないんです。
でも! 現実に、毎回受賞する人たちがいるじゃないか。
彼らは一体どうやって書いているんだろう? 何か秘密があるんじゃないか?
そう思いたくなるのも、無理はありません。僕も実際に、そう思っていましたから。
何かしら不正が行われているんじゃ……。
受賞した人は、ワイロでも贈ってるんじゃ……。
きっと審査員の弟子とかを受賞させてるんじゃ……。
どんなに一生懸命書いて応募しても、全然賞にかすりもしないと、疑いたくもなります。
まあ、落ち着いて下さい。
そこで今回は、現実的にコンクールで受賞するための、処方箋をお伝えしたいと思います。
これを読めば確実に受賞できる……というわけではありませんが、受賞経験者が心得ている秘訣はあります。
賞は水物という鉄則を忘れてはいけない
よく、「コンクールは水物」、という言葉を耳にしませんか?
みずもの
運や状況に左右されやすく、予想が立てにくいもの。
コンクールを審査するのは人間です。そして重要なことですが、コンクールの合格基準はありません。
いや、厳密にはあるんですが、審査員がどう感じるか、に全てがかかっています。「一定の基準に達したら合格」といった、資格試験とは異なるからですね。
たとえば、あるコンクールで、今回は優れた作品が多数応募されたとします。
他の回と比べて、格段にレベルが上っている。前回の受賞作と同レベルのクオリティの作品がいくつも出品されていて、前回受賞者ですら落選するくらい難易度が高い状況です。
そこへ今回、あなたが応募したら。
たまったもんじゃありませんよね。もう運が悪かったとしか思えません。
逆に、強豪がほとんどいない回もあるかもしれません。
今回は、大賞は出せないくらい微妙な作品だらけだ。困ったな。審査員が頭を抱えてしまって、消去法で選んでも、この中から賞を与えるのは無理なんじゃないのか。無理に受賞させたら、コンクールの名に傷がつくほどクオリティが低い。
仕方がないから、これにしとくか……。
そんな回だったら、ラッキーですね。
目を引く魅力がない作品でも、佳作くらいは受賞できるかもしれないですから。
こんな感じで、その時の応募状況により、受賞するか否かが大きく変わってくる、そんな回もあるんです。
応募する前に、今回は豊作か凶作か。分かったらいいのですが。残念ながら。そううまくはいきませんね。
もし分かる方法があったとしたら、みんな凶作の回に力作を出すでしょう。
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クオリティ以外にも、審査結果を左右する要素はあります。
よく言われることですが、シナリオコンクールの審査は、一次選考、二次選考、三次選考と進んで、最終審査が行われます。
一次や二次は、下読みと言われる方々が担当します。
下読みの方は、自分が担当する応募作を、順番に読んでいきます。どんどん読まないと終わらないので、効率的に行う人もいるでしょう。
真摯な人なら、じっくり読んでもらえるでしょう。
しかし、下読みも人間です。飽き、という感覚に依存する現象は避けられません。同じ作品が続くと、飽きてくるのです。
今回の作品はサスペンスが多いな、とか警察ものばかりだな、とか。
自分が担当する応募作が、続けて同じジャンルの内容だったら?
読んでいて、飽きてくるわけです。
あなたが今回、警官を主人公にした作品を応募したとします。
担当する下読みさんが、どんどん作品を読んでいきます。たまたま、連続して警官が登場する作品だった場合。
なんだ、また警察ものか。
と感じることでしょう。
内容は決して似てはいないんですが、同じような作品が続けば、前後の作品と比較されてしまうわけです、否応もなく。
後の方で読まれた作品は、不利になるでしょうね。
だんだん目が肥えてくるから、後で読んだ作品に対しては、評価が厳しくなるでしょう。
お、警察ものか〜、と読み始めるのと、なんだまたかよ〜、と思いながら読むシナリオでは、明らかに違います。
だからといって、私の作品を先に読んで下さい、という指定はできませんからね。
みずものの審査に打ち勝つ方法は、数を打つこと
こんなんじゃ、厳正な審査なんてできないじゃないか。
そう思われる方もいるでしょう。
仕方がありません。コンクールは人間が審査するものですから、そういう運が左右する要素は、排除できないんです。
また、コンクールが求める受賞の基準は、コンクールによって異なります。
あるコンクールは、優れた作家を輩出するのが目的だったりします。
別のコンクールは、現場で即戦力が期待できる人材を見出すことです。
また別のコンクールでは、優れた作品を発掘することが目的です。
みんな、選ぶ基準が違うんですね。
どんなに面白く優れたシナリオでも、主旨が異なるコンクールに応募してしまうと正当に評価されません。
シナリオコンクールの中に、橋田賞というものがあります。
これ、求めるシナリオが、
橋田文化財団が、日本人の心や、人と人とのふれあいを温かくとりあげた、新鮮なテレビドラマ脚本を募集します。
とあります。
このコンクールに、ホラー作品を出したら?
当たり前ですが、全く評価されませんよ(笑)
だって当然ですよね。人と人とのふれあいを温かくとりあげた脚本を募集しているんですから。
間違っても、ここにホラーや不倫もののシナリオなんか、送っちゃだめですからね。
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ただ、どのコンクールも、共通しているのは、みずものだということ。
まず、私達はこの「みずもの」のハードルを超えなければなりません。
どうすればいいのでしょうか。
結論から言うと、
選ばれないことを前提に出し続けるしかない
ということです。
どういうことか。
今回出したコンクールが、前述したような「厳しい」回だったとします。残念ですが、運がなかったため、あなたの作品は選から漏れてしまった。でもそれは作品自体がダメだったから、ではなく運がなかったことが原因。
残念ですが、このような取りこぼしは、避けることができません。
避けられない悲運はどうしようもないんです。
だから運なわけで。
ならば、次回に同じクオリティの作品を出すしかない。
(同じ作品を、という意味ではないですよ)
そして、運がいいか普通の状況の回に、見出してもらうしかないのです。
回を重ねれば、いつかは運に恵まれる回が回って来ます。
その時に、あなたの作品が優れていれば、間違いなく審査員が発見してくれます。
それを、狙うんです。
だから、何度も出す。
そして、みずもの審査の壁を乗り越えるんです。
それしか、状況に左右されるコンクールを攻略する方法はない。
数を打ちましょう。