脚本の超基本的な書き方・基礎編2【柱の書き方を詳しく解説します】

柱

前回、脚本の書き方の基本的な部分だけ説明したんですけど、あまりにも不足が多いことに気が付きました。
もっと詳細を書かないと誤解を招きそうですので、各項目別にきちっと書いてみたいと思います。

今回解説するのは、『柱』についてです。
脚本において柱は、主に場所の指定をする役割があります。つまり撮影するためのカメラをどこに置いて撮るか、を指定するんですね。

脚本を書く時点から、撮影のことを考えていかなきゃいけないということです。
場所といっても撮影するにあたって、その場所のどこを指すかも重要です。

柱の基本的な立て方

たとえば、病院のシーンを書くとします。病院と一言で言っても様々な場所がありますよね。
表玄関も病院だし、病室もそうです。廊下もありますし、ナースステーション、手術室、屋上、中庭、備品を置いた倉庫もあるでしょう。トイレだってあります。病院だけでもたくさんの場所があるわけです。

それをしっかり指定します。
具体的にどう書くかを説明していきますね。

まずは、病院のシーンを出すとします。
人物が病院のどこにいるかを入れましょう。

病院の受付にやってきた主人公を書きたいとき。

☓☓病院・受付

☓☓病院』とあるのは、どんな名前の病院でもかまいません、という場合にこう書きます。病院であれば病院名は何でもいいなら、伏せ字を入れます。
ストーリー展開上、病院名は何でもかまわないので好きに入れて下さい、というときに用います。

☓☓には固有名詞を入れることができます。具体的に、病院名を入れます。もちろん現実に存在する病院名ではなく、架空の名前です。
固有名詞をつけるかどうかは、脚本家の好みです。つけるのが好きな人、こだわらない人、色々です。

試しに名付けてみましょう。

「慶陽病院」はどうでしょう。何となく偉そうなお医者さんがいそうですね。

◯慶陽病院・受付

実際に存在しない名前がベストですね。いかにもありそうな、でも実際は存在しない名称を付けましょう。もし実際に存在していてその病院からクレームが来たら変更すればよい、くらいのスタンスでいいと思います。名前をつけるのに時間をかけるなら、他のところに神経を使う方が効率的ですし。
(プロでもない段階であれば、そこまで心配する必要はない、という意味です)

柱の役割:シーンの具体的な位置の設定

柱には、場所の細かい指定ができます。

「◯病院・廊下」とすれば病院の廊下のシーンになります。

もし、廊下の隅っこで演技させたいな、と思っても、廊下だけでかまいません。「◯病院・廊下・隅っこ」などと入れる必要はありません。

部屋のような空間のシーンの場合、外側と内側の違いを指定します。

◯慶陽病院・病室・外

これは病室の外側のシーンという意味です。
・外』にすると、病室の入口の外側から撮影したシーンになります。病室に入ろうかやめようか迷う人物を描写できます。
ベッドに寝ている主人公を映したいときは、『・中』を使います。

◯慶陽病院・病室・中

病室はたくさんありますから、ただの病室ではちょっと説明不足ですね。
具体的に部屋号室を指定してもいいでしょう。実際に何号室という指定がストーリー上意味がなくても付けてかまいません。
病院を舞台にしたドラマなら、複数の病室が出てくるはず。そんなときは区別する必要が出てきます。

◯慶陽病院・703号病室・中

場所によっては、広い空間もあります。
敷地が広い病院の中庭だったら、散歩道とか、大きな樹木の下とか、色んな場所が考えられます。細かい場所の指定をすることが必要なときもあります。

その場合は「・」を挟んで場所の細かい指定を入れます。
たとえば「◯慶陽病院・中庭・ベンチ」など。これは中庭で、ベンチが置いてある場所を想定し、そこに人物を座らせたシーンを撮りたいときに使います。
次のシーンで人物たちが歩いて移動して、いちょうの木の根元で腰かけているシーンが欲しい。そんなときは、

◯慶陽病院・中庭・いちょうの木

ですね。
広い病院の敷地内なら、色んな場所を移動させることで、ドラマに起伏が起こります。同じ場所ばかり出ていると単調で視聴者が飽きてきますので、場所に工夫をこらすと面白みが増します。

柱に指定する場所としては、大体3つ並べればほとんどの場所を指定できます。
これを4つに増やす必要はないかなと思います。

◯慶陽病院・中庭・いちょうの木・上

主人公が木に登って演技をするとして、じゃあ木の上も書きたいとしても、ここまでする必要はないでしょう。
(4つ重ねてはいけないというルールは聞いたことがないので、やるのはダメじゃないと思います。ただプロの脚本を読むと、4つ並んでいる柱をほとんど見たことがないです)

柱は簡潔に書く、が基本です。

柱の並べ方ルール:同じ場所は省略できる

柱を連続して立てる際に、前の柱と次の柱の間にはルールがありますので説明します。

次の柱が同じ病院内のシーンで、場所をちょっと変えた時は、頭の場所を省略することができます。

◯慶陽病院・廊下

この次のシーンが手術室だった場合は、『慶陽病院』を省略し、次の柱は

◯同・手術室

とします。

同じ場所のシーンが続くときには省略できますが、

◯慶陽病院・中庭・ベンチ

の次のシーンで、同じ中庭の散歩道を出したい場合に、

◯同・同・散歩道

と書く必要はなく、『同』は一つで大丈夫です。

◯同・散歩道

ですね。

柱の並べ方ルール:回想シーン

また柱には、回想シーンを指定することもできます。

◯(回想)海岸

突然主人公の回想が始まり、過去のエピソードを再現する際に使います。

回想が終わって元の場面に戻る際は、次の柱に、

◯元の病室

と入れるか、または回想シーンの最後に『(回想終わり)』と入れます。

で次のシーンは『◯同・病室』などと入れます。
(元のシーンへの戻り方は様々で、他の書き方もあります)

ちなみに、『フラッシュバック』という、過去に瞬間的に戻る演出方法もあります。
これは、回想より短い時間だけ戻るやり方で、回想のように柱をいちいち立てずに、現実のシーンの途中に挿入します。
ト書きの項目で解説する予定です。

柱の並べ方ルール:全く同じシーンを連続しない

柱は場所の指定をしますが、次のシーンに、前と全く同じシーンを入れたいときがあります。

でも柱は、全く同じシーンを次に出すことはできません。同じ場所ならそのまま連続するか、間に別のシーンをはさみます。
例外は、時間帯をずらす方法です。
後で説明しますが、朝や夜は柱で指定します。

この時間帯指定をつければ同じシーンでも連続できます。
『◯慶陽病院・703号病室・中』の次のシーンで、

◯慶陽病院・703号病室・中(夜)

これなら、時間がたって夜になった、と分かりますので連続できるのです。場所は同じでも、全然違うシーンになりますよね。
なんだか面倒ですが、これもルールです。

なぜか。
柱を変えるということは、別のシーンへ飛ぶことを意味します。柱は時間経過を表現できません。
逆に、同じシーンなら役者の演技は連続します。
同じ場所なら柱を変えずにそのまま演技を続けて下さい、と言う意味になるのです。

でも、同じ場所を出したい時ってありますよね。

たとえば、病室でベッドに寝ている主人公が、見舞いに来たお母さんに怒りをぶちまけるとします。
お母さんに『出ていって!』と怒鳴り、花瓶を放り投げて割ってしまう。

そして次のシーンで、反省してお母さんに謝るシーンを出したいとします。
さっきまで怒りに満ちていた主人公が、次の瞬間謝りだしたらちょっと妙です。そういうときもなくはないのですが、気分が変わるのが速すぎると、視聴者はついて行けないでしょう。高ぶった感情を鎮めるには、少し時間が必要です。

もちろん、作者のあなたはすぐ謝る主人公を書きたいわけじゃなく、ある程度時間がたってからお母さんに謝るシーンを書きたい、とする。
主人公の感情の静まりを表現するのに、割れた花瓶を片付けるシーンも必要でしょう。心境の変化を描かないと、視聴者は『あれ、なんでこの子はすぐに反省したんだろう?』と疑問に思います。

心境が変化したときは、ある程度時間が経過したことを表現する必要があるのです。
主人公がキレるシーンと、反省するシーンは分割する必要があります。そこで、間に関係ないシーンを挟むか、時間帯を変える必要が出てくるのです。
または、別のシーンへ移動して、違う場所で謝るのもいいでしょう。

ここで脚本に詳しい方なら、『✕   ✕   ✕』を使おうよ、と思うでしょうね。
『✕   ✕   ✕』に関しては、次のト書きの際に解説します。

これが面倒な脚本家の中には、次の柱に『(日替わり)』とつけて時間経過を表現する人もいます。
日が替わったのって、映像で見ても分かりませんよね。映像に映らないものは書かないのがルールなのですが……まあルールなんてそんなものですよ(笑)。

(ちなみに『(日替わり)』を最初に始めたのは、北川悦吏子さんと言われています。本当かどうかは分かりませんが)

柱の役割:時間帯の指定

柱には、時間帯の指定も入れることができます。

◯慶陽病院・廊下(夜)

同じ場所でも時間帯によっては全く違う景色になります。朝と夜では全く違うでしょう。

病院に行くシチュエーションを考えるとだいたい平日の昼間ですよね。でも病院は24時間稼働しています。朝も夜もあります。ドラマならどの時間帯が出てきてもおかしくないです。

主人公が夜、病室から抜け出すシーンを描くとしたら、上のような柱を立てる必要があるかもしれません。
時間帯はカッコでくくります。(朝)(早朝)(夕)(夜)(深夜)です。
夕方は(夕方)でもよいです。時間を入れるのはNG。(9時)などはダメ。
昼間なら、何も入れません。

つまり、昼間と夜ではライティングが全く違います。夜なら照明設備が必要になりますからね。
現場への配慮もありますし、またイメージする上で時間帯は重要です。

昼間と夜では雰囲気が違うため、多彩な演出ができるのです。
夜の病院は、一見静かな世界ですが、その中で何者かが動いている姿を出すことで、何らかの企みを見せることができます。
お、何か事件が起こりそうだぞ、と視聴者に感じさせるのですね。

その他注意事項:日替わりはあまり使うべきではない

日替わりとは、このような書き方です。

◯病院・すずの病室(日替わり)

要するに、『次の日になった』と言う意味ですが、前の日と次の日って同じシーンならほとんど差がないのが普通です。一日で景色が激変するドラマならともかく、普通のドラマ作品なら、一日くらいではほとんど変わらないはず。
どこが変わったの?と突っ込みたくなります。

これを使うのは、時間経過したことを見せたいわけです、ところがうまく時間経過を表現できないから(日替わり)と入れる。

通常、夜のシーンの次に朝のシーンが出れば、次の日の朝だな、と視聴者は分かってくれます。
でも、昼間のシーンの次に、全く同じ場所で昼間のシーンを出したいとき。そのまま撮影すると、一日経過したことが分からない。何とかしたいけど、いい方法が見つからない。
私は考えるの面倒だから適当に映像で見せといてね、と誰か(監督)に頼んでいるわけです。

自分で考えるのを放棄するのって脚本家としてどうですか?という話です。
こだわらない人は使う。こだわる人は別の方法を考える。

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