なぜ優秀な脚本家が活躍していないのか

前回、なぜ日本のドラマはつまらないのか、を様々な方向から説明してみました。

結論として、優れた制作者やスタッフ、そして実力派の脚本家が現れれば解決に近づくのでは、と締めくくりました。

しかしそれだけで解決するのでしょうか?

というわけで、別の角度から考察してみます。

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今の日本に優秀な脚本家はいない?

映画業界、テレビドラマ界、その他ネットメディア等で活躍している人はたくさんいます。

活躍しているからと言って優秀とは言えないかもしれないが、少なくとも活躍していないのに優秀な人は、大御所を除いて皆無でしょう。

私達は雑誌に掲載されているものを除けば、直接脚本そのものを読む機会はありません。完成品の映像を見て脚本の出来がいい、悪いと判断するしかない。
しかし完成した映像は、脚本そのものとは違います。脚本があってそれをもとに撮影準備に入り、役者や裏方さんを揃えてようやく撮影し、編集して完成したものを見ています。
実際の脚本とは微妙に異なる内容になることも珍しくありません。

優秀な脚本と完成した映像は別物

しかも、大抵の脚本は完成後に「直し」と呼ばれる修正作業があります。プロデューサーと監督と脚本家で内容を詰めて、撮影に適しているか検討するんですよ。

内容自体に面白みが欠けるなら、もっと面白くなるよう展開をがらっと変える必要があるかもしれない。
脚本上ではたった一行で書かれている描写が、実際に撮影するとなると莫大な予算がかかるとか。
表現上、この作品にふさわしいか。
役者はこんなシーンを演じてくれるか。
スポンサーからNGが出ないか。
その他、いくつもの修正依頼があるかもしれません。

それらは、作品に関わっている人がたくさんいて各々の立場があり全員の考え方が異なるために起こりうること。
純粋に脚本家の望むように書いた脚本(設計図)がすんなり通ることの方がまれです。

でも私達は、そんな事情を知らされることもなく、映像作品を見て「面白い」「つまらない」と判断せざるをえません。

考えてみたら、不思議なものですよね。

たとえば、レストランで出てきた料理を食べたあとで、
・この肉牛を育てた酪農家は牛の育て方が下手くそだな。肉が固いし、与えた餌の質が悪い。
・中に入っている野菜を作った農家は未熟だね。もっと上手に育てればさらに美味しくなるのに。

なんて評論できると思います?
できるとしたらそれはそれですごい評論家ですが。相当な技量を持った人でないと正確な評価なんてできないでしょう。

まあ、そんな堅苦しいことは考えず、単純に面白かった、つまんなかった、と言っているだけですがね。
個人的に感想を言うのは自由ですし勝手にしろですが、もし業界を面白くしたいと考えているなら(それが全体の幸福につながるなら)、何が問題かをきっちり把握した上で評価を下したいかなと。

脚本そのものの優劣をつけるのは非常に難しいんです。

で。
じゃあ脚本自体は優秀だとして、映像化する段階でつまらなくしているとしたらどうなの?ってことですよ。

脚本自体がつまらないのなら、そこから直さなきゃいけないですが。
でも、脚本が面白くて映像がつまらないなら、映像化プロセスを改善すればいい。

原作付きの作品のドラマ化なら、脚本のつまらなさを補えるかもしれないですね。
原作と比較してどうだったか。原作の魅力を十分活かしきれているか、逆に殺しているか。
小説や漫画を映像化するのは簡単じゃありませんし、それぞれ難しい部分がありますが、単体の作品として楽しめれば及第点はあげてもいいのかなと思います。

原作ありのドラマ・映画が面白くて、オリジナルのドラマ等がつまらなかったら、原作=脚本が原因と言えるでしょう。
非常に残念ではありますが、原作ありの映像作品を粛々と作り続けるしかないわけです。と同時に、優れたオリジナル作品を制作する努力を続けるしかないかと。

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なぜテレビドラマは視聴率が低迷しているのか

昔、20年以上前は、視聴率20%以上が当たり前の時代でした。その頃と比べれば、明らかに現在は視聴率を取るのが難しくなっています。

しかし、数年前の「家政婦のミタ」が、2010年代にあっても瞬間最高視聴率が40%という怪物的な数値を出すことは可能と証明してくれました。
1970年代の話じゃないですよ、ほんの数年前の話ですから!

なぜ今のドラマ業界はいわゆるヒットメーカーがいないのか。
抜群に面白い脚本を書く人が
いないわけではないが、肝心のヒットメーカーが最前線から去っているような印象を受けるのです。

つまり、この業界に魅力がない。
業界そのものに魅力を感じなくなった人たちが、どんどん逃げ出しているのではないか。

テレビ業界独自の規制が多い。脚本に横槍が入る。不自然な設定になっても構わず追加キャストを入れる、新人の売り込みで登場人物が不自然に増える。設定をスポンサーの都合で変更する。
ただ、これらはそれほど深刻ではない。

最大の問題は、脚本家が他の業界ほど稼げないこと

オリジナルのストーリーを作り込むには時間がかかる。手間をかけて練りこんだと思ったら3ヶ月で終わる。

もしこれが漫画家や、漫画原作だったら? ヒットすればギャラは青天井で跳ね上がる。

年収数億円の報酬も不可能じゃない。

でも脚本だったら一回放送しておしまい。1クールの連ドラを担当しても、一話あたりの脚本料が100万円前後として1000万〜1200万円くらいかな?
エリートサラリーマンレベルではあるけれど、いわゆるクリエイターとしては平凡なレベルではないか。
大ヒットすれば続編が作られるので、仕事の依頼が来るかもしれないが、それでもその時の報酬をもらえるだけ。

DVDが売れたら少しは入ってくるけど、漫画家の比ではない。
漫画家だと、コミックスがバカ売れしたらその分報酬が上がっていく。
そりゃ才能ある人たちはみんな稼げる業界へ行くよね、って話です。

プロ野球だってサッカーだって、稼げるからこそみんなプロを目指すわけで。もちろん好き嫌いはあるだろうけど、運動能力がある人はより稼げるジャンルへ行きますよ。

それを踏まえて、ではどうしたら面白いドラマが作れるのか。

優秀な人材を集める方法は昔から決まっています。それなりの報酬が得られるようにすること。
まず隗より始めよ、です。

執筆した作品が映像化されたらではなく、注文を受けて提出したら報酬を支払う。
映像化したか否かにかかわらず。

映像化された作品が完成したら固定報酬を支払う。さらに視聴率が一定以上の水準に達したら追加ボーナスを支払う。

スター脚本家を生み出し、脚光を浴びるようになれば、目指す人たちが増える。
稼げると知られれば、ますます若い人たちの中でより優秀な人材が集まってくる。クリエイターに脚光を浴びさせて、話題作りをしつつ実力をつけさせる。
(あれ、何年か前に、フジテレビがそんなことをやってましたね。あれどうなったんだろう……)

この好循環を作らないといけない。

ではどうやって高額のギャラを支払うのか? 実績を作って認めてもらうか、

天才が現れて高額を要求してそれが当たり前になるまで活躍してもらうか。(プロ野球方式)
甲子園みたいな新人発掘の場を設け、テレビ局のスカウトマンが専属契約を結び、数年間の育成期間に決められた本数の執筆を依頼し育てていくとか。

あるいは、エージェント制にして出来高制でガンガン煽って脚本料を釣り上げるのもいい。

でもそんな予算あるのかって?
ないなら出せるような体制を作る。つまりマーケットを世界規模に拡大して海外に売り込むことを前提に制作する。

海外へ売り込むならダジャレ禁止、流行語も封印、ドメスティックな内容もダメ。ただし日本色を出すのはどんどんやるべき。

以上を全部同時並行で進める。

でもまずは、誰かが実績を作らないとダメなんですよね!

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